インタビューを通じ、大潟村あきたこまち生産者協会のお米やパスタを選んだ理由、おすすめの調理法などを紹介します。
ホーム > プロの料理人が選ぶ理由 > 美味しさと楽しさを居心地の良い空間で「プレミアム和牛の店 味蔵の杜」様
2023.9.11
東急東横線、目黒線の「元住吉」駅から徒歩2分にあるA5ランクのブランド牛が楽しめる「味蔵の杜(みくらのもり)」様。
創業65年の歴史を刻みながら、リニューアルされた落ち着いた和の雰囲気が漂う店内には、心地よく焼肉を楽しめるよう工夫が施されています。
26年来、弊社の秋田県大潟村産あきたこまちをお使い頂いており、美味しい食材を求め産地に赴き、自ら仕入れ交渉をされる情熱を持つ店主様にお話をお聞きしました。
-お店をオープンされた背景や、当時のエピソード等があればお教えください
祖母の代からなので創業について詳しくはわかりませんが、横浜の反町で祖母と母親が焼肉屋を始めて、母親の兄弟とみんなで商売を始めたのが昭和33年です。
戦後の日本がまだこれからという時で、もともと在日ということもあり、兄弟で何か商売を、焼肉でもやろうかということになったそうです。横浜は屠殺市場とか南部市場があるので、そこに直接行って良いお肉を仕入れて、和牛にこだわってやっていました。
お店を始めて14~15年ぐらい経った頃、母親と父親が独立することになってこの元住吉に移ってきたのが昭和47年です。そこからずっとやってきました。
自分は生まれながらの焼肉屋なので、学生の頃は部活が終わってもいろいろ手伝いをして、土日もほぼ手伝いをしていました。お小遣い制でやっていたのですが、高校を卒業する時に就職をどうしようかと考えて、お店は守っていった方が良いのではないのかと思いました。焼肉屋とか商売が嫌いではなかったので、他に就職しないでそのままお店に入ったという感じですね。
-今年で創業65年に入られますが、長くお店を続ける上で大事にしていることをお教えください
やはり素材、うちの場合はまずお肉です。以前は普通の和牛という括りでしたが、今は国産牛をはじめ松阪牛、神戸牛、近江牛を取り揃えています。それと、上質なお肉をご用意した上で居心地の良い空間、脂飛びや匂いを気にせず快適にお客様のペースで焼いて食べて楽しんで頂けるお店づくりにもこだわっています。
リニューアルして今年で6年目になりますが、それまではモクモク煙が立つ焼肉屋で、同じフロアには居酒屋があって上がアパートみたいな感じでした。大家さんから耐震が厳しいし、もう築50年近いから建て直したいと話があったタイミングでリニューアルしました。
一年半くらいかかりましたが、それまで自分たちが感じでいた不具合やお客様から頂いたお声、例えばちょっと煙いねとか脂が飛ぶねとか、個室があればとか、そういう点を全部反映させて今のお店になっています。
このヘルシーロースターもなかなか面白いですよ。この網の熱で焼くわけじゃなくて、網の間から炭火で焼きます。一般的な焼肉屋の焼き台は500~600度になるので、お肉をのせた瞬間に脂が飛んで煙が出ます。横から吸っても煙が出ることに変わりはありませんが、このロースターはそもそも煙を出さないようになっています。
筒状になっている網の中に水が通っていて170~180度に保たれています。そこまで高温にならないので、お肉を網にのせてもジュッとはいいません。この網はあくまでもお肉をのせる台になっていて、下にある炭で少し遠火、遠赤外線で焼いてあげる。魚を焼くようなイメージですね。脂飛びもないし煙が出ないので手入れも簡単ですが、匂いがつくこともないので特に女性のお客様には喜んで頂けるのではないでしょうか。
一般的な焼き台だと脂が飛ぶことにより脂の旨味や水分も飛んでしまうので、シマチョウとか内蔵を焼くと小さくなってきますよね。このロースターは小さくなりません。脂や水分が飛ばない代わりにしずる感とかジュージュー感はちょっと物足りなくなってしまいますが、会話に気を取られてうっかり焦がしてしまうということがありません。
今はお店側でお肉を焼く焼き師とかがいますが、面倒くさいですよね。基本的には店員とじゃなくてお客様同士で楽しんで頂きたいので、おしゃべりしていてもお肉が焦げずに、気づいた時にちょうど良く焼けているという温度設定になっています。
-種類が豊富なお肉の他に殻付きの牡蠣もありますが、食材選びで大事にしていることをお教えください
取引している肉屋さんとは密に連絡を取っていて、大体は仕入れの10日ぐらい前に発注します。営業所がいくつかあるので、基本的に全部西の方のお肉をお願いしています。肉屋さんに余裕があるときは、松阪牛を一頭買ってカルビのセットを分けてもらったりしています。例えばヒレとかサーロインといった部位はステーキ屋さんで使われたりしますが、カルビとか焼肉で好まれる部位はどうしても脂が多いところがあるのでステーキではあまり使われません。
肉屋さんからは生肉を一括で、内臓屋さんからは内臓を仕入れています。例えばシマチョウとかミノとか内臓は、外国産か国産で産地が全部ひとくくりなのでそこまではできませんが、生肉は識別番号が振られているので、必ず毎回証明書をもらってちゃんと識別番号を確認して管理しています。
リニューアルで休んでいる間に松阪(三重県)、神戸(兵庫県)、近江(滋賀県)とか西の方を全部回りました。その中で、じゃあ海鮮もやってみようかとなり、オイスターバーとか牡蠣が人気あるよねとなりました。そこで三重県の鳥羽よりちょっと下の方にある、真珠貝の養殖が盛んな二枚貝の産地になっている浦村というエリアで、いくつかある牡蠣小屋でまず試食してみました。
牡蠣小屋で提供されるのは、身が小さくて市場にあまり出せないような牡蠣だと知っていたので、そこで知り合いの牡蠣屋さんを紹介してもらいました。一年ものの牡蠣をある程度の大きさ、身入りもしっかりしているものを選別してもらって、旬の春先に直送してもらって一括冷凍しています。生でも食べられるほどの鮮度ですが、焼き牡蠣として提供しています。
牡蠣小屋への飛び込みにしても、お客様はもちろん、食材屋さんも大事にしなきゃいけないということをずっと親から教わってきました。仕入れているからといって絶対に威張っちゃいけない。そうすると周りから支えてもらえるので、人脈は大事にしたほうがいいよと。自分の代になってもお客さんや仕入先、設備屋さんにもあまり無理なことは言わずに大切にしています。
-お米のこだわりや弊社のお米を使って頂いている理由をお教えください
きっかけは、平成米騒動です。平成5年に記録的な冷夏で国産米が不足して、タイ米とか外国産のお米が輸入されたことがありました。それをお肉とご飯で合わせるとまずい!それまでは米屋さんから仕入れていましたが、米屋さんも産地や問屋さんから仕入れたりしているので。
じゃあ産地から直送してもらった方が良いのではないかということになり、小さいところだとお米不足になった時に困るし、ある程度取引が長くなれば、もしまた騒動が起きた時にも融通してもらえると見込んで、あきたこまち協会さんから届けてもらうようになりました。
魚沼産とかいろんな営業が来ますが、他のブランド米って高価なところもあるし、ちょっとお肉と合わないんですよね。ご飯の存在感が強すぎるのかな?お肉と一緒に食べた時、ある程度お米の味も味わえるのがあきたこまち。スーパーで売っているあきたこまちは品質的に不安なので、産地直送で届けてもらえれば間違いないと。大潟村も気候とか不安定だった時期もあるみたいでしたが、それでもちゃんとお米を届けてくれたから、ずっとお願いしています。
-お米の炊き方についてポイントがあればお教えください
以前はガス釜を使っていましたが、リニューアルの時に大きい電子釜に替えてあきたこまちに合うような設定で炊いています。ガス釜から電子釜になったので、炊き加減については結構試行錯誤しましたが、やはり電気の方が安定して炊けます。
-お肉を選ぶ際に気をつけたいポイント等があればお教えください
赤身の好きなご家庭と脂身の好きなご家庭があると思いますが、すき焼きなんかで本当に美味しいお肉を食べたいなと思ったら東北のお肉が良いです。
例えば米沢(山形県)とか北海道でも良いですが、北の方は酪農が盛んなのでミルクに特化した餌の配合になっていることもあり、気候も寒いし牛自体が脂肪をつけようとします。そのため脂がのった肉質になり、そのお肉をすき焼きとかしゃぶしゃぶにすると、その脂の旨味が出てきます。
焼肉をするなら九州や関西のお肉が良いですね。東北ほど寒くないし、ミルクをとるわけでもなく食用に特化しているので。
スーパーでお肉を選ぶポイントは、外国産はわかりませんが、国産のA4、A5ランクだと脂、つまりサシが白いものが良いです。サシが黄色いと脂が強く、白くて透き通った白だったら間違いなく美味しいお肉。ちょっとくすんだ黄色、生成り色だとあまり良くないか、熟成が進んでしまったお肉、要は古いお肉ということです。
-店名が印象的ですが、創業当時から変わっていないのでしょうか
昔は盛竜苑(せいりゅうえん)という名前でしたが、こちらの元住吉に来た時に盛竜苑を会社名にしました。親の代までは盛竜苑でやっていましたが、自分の代になって盛竜苑、なんとか苑って焼肉屋には多い店名ですが、ちょっと古臭いよねと思いました。
一見して何屋さんかわかりづらいですが、じゃあこの名前にしてみようかということで今の店名になりました。「あじくらのもり」とか「みらくる」とか、皆さんから好きに読んで頂いていますが、最終的にお店に来てもらえば良いと思って、店名はそこまで気にしてはいません。
-LUX Restaurant & Bar Awards 2023受賞についてお聞かせください
※Restaurant & Bar Awardsは、ファッション、美容、レストラン、旅行等の様々なトピックに焦点を当てた富裕層向けのイギリスのライフスタイル誌LUX Life Magazineが主催するもので、世界中の高品質なサービスを提供している飲食店を選定、評価し表彰しています。
突然、英語でメールが来たので最初はスパムかなと思っていましたが、改めてアワードにエントリーされましたという内容のメールが届きました。そこでホームページを確認して、エントリーしたのが今年の1月の終わりぐらいです。それから審査期間があって、「Best Premium Japanese Beef Yakiniku Restaurantを受賞しました」と通知が来たのが3月半ばくらい。全部英語でしたので、翻訳機能をフル活用しながらやり取りしました。
今年、日本で受賞したのは4つのお店だけで、うちのお店以外に2つの焼肉屋さんと寿司屋さん、後は香港、中国、マレーシア、イギリス、アメリカとか世界中のお店が受賞しています。
味蔵の杜様掲載ページ(33P)>>>レストランアワード2023 デジタル版 / 英字
=インタビュアー実食!=
こだわりのプレミアム和牛のお肉は見事なサシが入っており、脂がのっているのが見た目にも分かります。まずは何も付けずに一口、口に入れた瞬間お肉の旨味が口いっぱいに広がります。これだけでも十分に美味しい肉寿司に醤油を少し付け、ワサビを上にのせて食べると、もう至福の味わいです。ワサビは刻みワサビになっており、これがまた良いアクセントになっていました。
1貫は一口で頬張るには難しいくらい大きく、ボリュームがあります。この2貫で1,000円弱と考えると、とてもお得に思えます。
ご家族で経営されていることもあり、とてもアットホームな空間です。高級感のある店内の個室でゆっくりと良いお肉を堪能出来たので、お値段以上の満足感でした。とても美味しかったです。ごちそうさまでした。
稲垣
神奈川県川崎市中原区木月1-24-27
TEL:044-433-8908
営業時間:夜 17:00 ~ 翌1:00
※ラストオーダー24:00
定休日:木曜日(祝日は営業)
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