インタビューを通じ、大潟村あきたこまち生産者協会のお米やパスタを選んだ理由、おすすめの調理法などを紹介します。
ホーム > プロの料理人が選ぶ理由 > 厚い人情と地元愛。地域に愛されて半世紀「ひさご寿司」様
2023.6.9
神奈川県横浜市の東側に位置する鶴見区の「生麦」。1980年まで存在していた「生麦町」は地域の呼び名と駅名にその名を残し、陸側には住宅街と海側には工業地帯が広がる人情味溢れる下町です。
その生麦にほど近い地で50年以上もの間、この地元の人々と深く繋がり合いながらお店を続けられているお寿司屋さんが「ひさご寿司」様。
地元愛が止まらない店主の中西様から、お客様への真摯な想いと、食材の鮮度を保つ方法や市場での駆け引き、そしておいしいごはんのこだわりを教えて頂きました。
-昭和43年に創業されたとのことですが、背景をお教えください。
父親が、この場所で商売を始めました。僕はその跡を継いだ二代目で創業時には三歳くらいでした。店舗兼住宅なので、子供の頃はうちに帰って来たらこの状態、というのが当たり前でしたね。
-店主様はどのくらい修行されていたのでしょうか?
外にいたのは三年ぐらいで、ずっと和食をやっていました。修行に行っていたのは銀座の日本料理屋さんなんですけど、高校を卒業してから調理師学校に行って、22歳ぐらいまでいたのかなぁ。
10年ぐらいは外でやってみたいなと思っていましたが、バブルの頃ということもあってお店が忙しかったもので、そうも言っていられないような状態でしたから、この店に入りました。
寿司の握り方は親父から教わりましたね。
-お店を続けていく上で大切にしていることをお教えください。
このお店は地域に密着してる寿司屋なので、いい加減なことはやらない。仕事に真摯に向き合うことが一番お客様の信頼になるので、それがお店の継続に繋がっているのかなと思います。
僕は地域の方とのコミュニケーションを大事にして、地域に根ざしたお店にしたかったんです。
例えばこの町の老人会から「お弁当を作って欲しいんだけどやってくれる?ワンコインしか出せないんだけど…。」と頼まれたら、普通なら「その金額では難しい。」となるところなんだけど、うちは地域のことだからやるんです。
「この店はよくやってくれる。」という評判になって、次に繋がる。地域に根ざした商売なので、頑張って利益は度外視!そんなことしていたから、なかなか稼げないんだけれどね(笑)
銀座の日本料理店で腕を磨いた店主の中西 辰久様。多少の無茶も引き受けてしまうほど地元愛と人情にあふれる。
年単位や月単位で色々とイベントがあったんですけど、コロナ禍で減ってしまったね。
それでも今年に入って桜まつりが4年ぶりに復活したり、少しずつ人が集まって、地域でイベントもするようになっています。
普段はこうして店舗でお客さんを待っている商売なもので、駅前でやっているマルシェに参加するようにしました。お店の外へ出て行って、地元の方とコミュニケーションを取れる商売が、なんだか最近楽しいかな。お店にいると「今日はお客さんが来ないなぁ」とか「今日は電話が鳴らないなぁ」という気持ちになっちゃうんですけど、マルシェに出れば人がたくさん来るので、お店とはまた違うコミュニケーションが取れるんですよ。
地域との接点を作る生麦de日曜マルシェにはたくさんの方々が集まり、店主様も楽しみにしている。
「店舗がこの辺りにあるんですか?」とお客さんに訊かれて、そこにありますよと言うと「ありましたっけ?」うちはかれこれ50年以上やってるんですけどねぇ~。みたいな(笑)そんな冗談交じりで会話をしていると、「今度行きます。」という感じでお客さんが来店してくださったりする。いろんなイベントに積極的に出ていくことを、店のPR半分、自分の趣味半分みたいな感じで楽しんでいますよ。
第2・第4日曜日にマルシェ(公式Twitter)や、2~3万人も来るようなイベントにも参加しています。
-食材選びで大事にしていることをお教えください。
海鮮は生ものなので、当然鮮度は気にしていますね。また、同じ食材でも産地や時期も当然違ってくる。
よく「江戸前のアナゴがおいしいよ」と言われますが、江戸前のアナゴは夏が旬なので、逆に真冬は旬から外れます。技術でそこを補うのかもしれないけれど、やはり旬のものと比べちゃうと負けますよね。じゃあその時期にはどこのものが良いのか?となると、長崎だとか、南の方がおいしい。ちゃんと良い時期に良いものを仕入れれば良いんです。
食材の持つ性質を熟知しているからこそ、最高の鮮度でお客様へ提供できる。
一番いい時期に鮮度の良い食材を仕入れて来て、うちでさばいて、真空にして瞬間冷凍しておく。
-60℃の冷凍庫を持っているのですが、マグロはその温度じゃないと冷凍焼けしちゃう。鮮度が保たれて質が変わらないから、ものによっては1年分を仕込んでおきます。当然、冷凍できないものもありますから、そういう食材に関してはその時にいい産地のものを使っていますね。この方法が、僕は一番良いと思っています。
うちで仕込んだアナゴを解凍すると身が縮むんですよ。何故かというと筋繊維がまだ生きているからです。活〆したアナゴをさばくのは時間との勝負で手早く冷凍するから、解凍してから筋肉の硬直が始まるくらい最高の鮮度だということです。
ネタによっては冷凍との相性もあって、貝はうちで殻から剥いていますが、あまり冷凍に向かない。
天ぷらの食材も鮮度にこだわり、カラッとおいしく揚がっていく。出来上がりが待ち遠しい。
仕入れは、市場に足を運んで自分の目で見て仕入れています。少しでもお客さんに安く提供したいから市場の方と駆け引きをするんですよ。
言い方がちょっと悪いかもしれないけれど「拾い買い」だね。前もって品物を見ておいて、市場を一周回って戻って来て、目当ての魚がまだ売れていないとしたら「まだ魚があるね。どうする?」と駆け引き開始です。それを全部うちで貰うから、その分いくら負けられる?と交渉するわけですよ。
その分をお客さんに還元できるじゃないですか。うちは2月に値上げさせてもらいましたが、こういう仕入れの努力をしながら30年以上も値段据え置きだったんです。
普段通っている市場は生麦の魚河岸です。生麦の市場はそんなに軒数はないのですが、先輩や後輩が魚屋をやっていますから、できるだけ地元の生麦で仕入れたいですね。もしそこで食材がまかなえないなら、横浜の中央市場や豊洲市場にも行っています。
-弊社のお米使って頂いている理由をお教えください。
お米が大凶作だった時、とにかくどこにもお米がなくて、当時取引していたお米屋さんが国の方針か何かで、うるち米とタイ米をブレンドして販売しますと言い出した。それで寿司は握れないからもう買わない!でも、どうしようと思っていました。
新聞広告であきたこまち協会の広告が出ていたのかな。ここに頼んでみよう!とお米を送ってもらったら、値段もそんなに高くない、品質も良い、対応も良かった、ということからそのまま20年以上付き合わせてもらっています。
長く使い続けていても、品質が落ちたりだとか、そういうこともなかったです。産地等が変われば、また水加減やら何やら変わってしまうけれど、ずっと安定してお米を頂けたのが良くて、ずっと使い続けています。
「安心していつも通りの仕込みができる」という、あきたこまち協会の大潟村産あきたこまちで作ったこだわりの酢飯。
-お米の炊き方のポイントをお教えください。
うちでできることは、研ぐことと、水加減ですね。少しでも素材の味が出るようにと、RO水(=微細なフィルターを通して濾過したお水)を炊飯と料理全般に使っています。
精米の技術が良い今のお米は昔みたいに頑張って研がなくても良いですよね。
また、暖かくなってくると冷蔵庫に入れて保管して、使う分だけ出すこと。
それから、季節によっては水分量を少しずつ変えていますね。それもずっと20年以上同じところのお米を使い続けているからこそ、安心してやれるんですよ。もしお米が変わると、一回一回、調節が必要になりますから、ずっと安定して同じ品質で送って頂いているので有難い!安心して、いつも通りの手順で炊けるのが一番ですから!
あとは、炊く量ですね。最初からごはんがたくさん出ると分かっていれば一升なり、二升なり、炊きますけれど、普段は普通の炊飯器で小分けに炊いています。少しでも炊きたてをお客さんに出したいですから。僕は、時間を逆算して予約が6時だと言うことならそれに合わせて、できるだけ少量ずつ炊飯するように心がけています。一度にたくさん炊いたごはんをずっと使いたくないですからね。
-家庭でもできる寿司飯を作るおいしいポイントをお教えください。
寿司飯と普通のごはんの違いは水加減だけです。
家庭だと炊飯器だから、炊飯釜に表示されている線の通りごはん用と酢飯用の水分量をきちんと守ることですね。お米が良ければ、今は炊飯器の性能が良いので信じれば大丈夫です(笑)
お米とお水が良ければ、シンプルに、小細工は別にいらない。うちわであおぎながらよく混ぜます。
うちは飯台(=寿司飯を調理するために使う木製の寿司桶のこと)は使っていません。代わりに大きな金属製のボウルを使っているんです。飯台を使うと、木が寿司酢等の水分を吸っちゃうんですよね。それから、木製だとどうしても黒カビなどの衛生面が気になって…そこも好きじゃなかった。すごく気を遣って、乾かしすぎてもいけないですし。
ある日、ボウルでシャリ切りされてるお寿司屋さんをテレビで見て、なるほどね!と思って使い始めたんです。ボウルを使えば当然、金属なので水分を吸わないから、きっちり寿司酢の分量を合わせられる。ボウルは底が彎曲しているので、ボウルを回しながら混ぜると綺麗に混ざります。
-寿司酢は店主様がブレンドされているんですか?
穀物酢を2種類と、あとは砂糖と塩だけで自分でブレンドしています。元は先代のレシピでやっていたんだけれど、自分で調合するようになってから改良したんですよ。
受け継いだのは昔のことですからね、結構アバウトで、ラーメンのどんぶりの中にごはんの茶碗を置いて、それにお酢をジャバジャバ入れて、どんぶりにたまった量で「これで一升かなあ?」みたいな目分量(笑)
僕は先代の仕事を横から見ていたんだけれどそんな調子だから、適当すぎて味が安定しないからダメだろうとずっと思っていたんですよ(笑)僕が主体になってお店をやるようになってからはきちんと計量して寿司酢を作るようにしました。だから味にブレが少なくなったかな。
暑くなれば少しお酢を強め、寒い時期はマイルドにしています。夏と同じ酢飯を冬にもやるとお酢を強く感じ過ぎるので、混ぜ込む量を季節で変えています。
それから、うちの酢飯はどちらかというと酢が強めなので、うちのお客さんは「酢飯を食べた!って感じがする!」と言うんですよ。回転寿司に行ってお寿司食べても、あれは酢飯じゃないよってね。うちの寿司飯じゃないと物足りないんじゃないかな?(笑)
=インタビュアー実食!=
目にも華やかなおすすめ握りを頂きました。
■おすすめ握り■
本マグロ(大トロ・赤身・大トロ巻き寿司の3種!)
カンパチ
いくら
甘エビ
平貝(大きな二枚貝でタイラギともいいます)
カニ
卵焼き(お店で手作り!)
アナゴ
茶わん蒸し
小鉢
あら汁(おかわり無料の大サービス!)
マグロは三崎港直送。中でも筋が少ない上質な部位を使用し、程よく脂が乗っています。大トロ巻きも贅沢でとろけるような味わいで絶品でした。アナゴはふっくら軟らかく、刻んだ柚子との抜群の相性です。平貝は大きくボリュームがあり、細かくキレ目も入れてあり噛むほどに甘みもあって食べ応えがあり美味しかったです。カンパチは天然物を一週間も熟成し、一口入れた瞬間からあっという間に口の中でとろけるような味わいです。あら汁は一度焼いた魚のアラを使った一杯です。「お金払うからもう一杯飲みたい!」と言われる程人気のあら汁ですが、なんと無料でおかわりできます。
協会の大潟村産あきたこまちを使用した酢飯は、ネタの良さを生かすようなお酢の加減で、お米のしっかりとした味わいも感じられました。
店主様自ら足を運び、市場で仕入れる厳選した魚をリーズナブルな価格で味わえる、細部までこだわり抜かれたお店でした。ごちそうさまでした!
神奈川県横浜市鶴見区東寺尾3丁目17−11
TEL:045-572-0757
営業時間:【昼】
11:00~14:00
【夜】
17:00~22:00
定休日:火曜日
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