プロの料理人が選ぶ理由

インタビューを通じ、大潟村あきたこまち生産者協会のお米やパスタを選んだ理由、おすすめの調理法などを紹介します。

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旬を味わう”秒単位”の真剣勝負。串揚げ「ぎんざ磯むら 横浜関内店」様

2023.5.10

神奈川県横浜市中区。「関内(かんない)」は、駅名にもあるほど一般的な地域の呼び名ながら実際の地名には存在しないという、古くは安政の時代にルーツがあるといわれる横浜市の中心市街地です。

横浜市役所、桜木町駅、そして関内駅に囲まれた立地に、銀座の串揚げの名店を源流に持つ「ぎんざ磯むら」様はあります。

 

お客様に楽しんで頂くための工夫や、「秒単位」で決まるという串揚げの奥深さと、旬を見極める食材へのこだわりを店主の田中様に伺いました。

また、「衣がはがれる」「食材にうまく火が通らない」等、何かとうまくいかないことが多く難しい揚げ物ですが、プロにコツを教えて頂きました。

 

-創業時のエピソードをお教えください。

銀座にある本部は創業昭和59年で、うちはその加盟店で平成4年に立ち上げました。今年の12月に30周年を迎えます。フランチャイズ募集に、うちの先代(私の父親)が、「やりたい!」と手を挙げました。我々はそれに巻き込まれて…じゃないですけど(笑)先代が実際立ち上げたのに、30年我々がずっと守っているという形です(笑)

店主の田中様。明るい人柄とトークで食事がよりおいしく、より楽しい。

 

-横浜市の関内で創業されたのはどのようなきっかけがあったのでしょうか。

串揚げは当時そんなにメジャーではなく、それなのに東京進出っていうのはなかなかハードルが高いと思いまして。当初はここ関内と、新横浜が候補になったんです。

いろいろ物件を見ていた時に、当時の本部の会長が「こっち(関内)にしなさい」と。

ただ、当時はバブルがはじけたことと、さらにこの辺は飲み屋街なので、飲食店をやっていくにしては微妙な場所だったんですよ。そういうことながらも路面店だったのと、インターネットの普及もありまして、調べて来られる方がだんだん増えてきて、今に至っています。今や桜木町駅が近くなったし、横浜市庁舎も近くなって良い場所になりましたよ。

-現在でこそビジネス街ですが、関内周辺は様変わりしましたよね。

ひと昔前はクラブばっかりで、それがバブル後にどんどん潰れた暗い街みたいな(笑)…そういう状況でしたね。だからお店を立ち上げるにあたって「大丈夫?」って言われたりしました。

今とは違って当時はインターネット、スマホなんかないですし、ガラケーがあるかないかくらいでしたよね。こんな場所で大丈夫?って言われてましたよ。

 

-お店を続けていく上で大切にしていることをお教えください。

串揚げ屋さんなので、もちろん串揚げをおいしく出すこと。

お昼のメニューに関してはごはんと味噌汁にも手を抜かずにしっかりおいしいものを出すこと。

やっぱりお客さんが何を目的にされているかと考えると、それはおいしい料理ですよね。お昼だったらごはんと味噌汁がしっかりしてないと、やっぱり嫌ですよね。

夜のメニューに関してはそこにお酒との相性が絡んできます。

また、お客様の目の前でカウンター越しに串揚げを揚げますので、早く提供して、楽しんで頂く感じですね。お客様は「非日常」を楽しみにして来店されるわけで、エンターテイメントというか、普段はそうそう食べられないものを提供するということです。

一本一本調理する串揚げは目の前で仕上げられていく。贅沢で特別な空間。

 

舞茸(左)、新たまねぎとブロッコリー(右)を揚げたて熱々で。

 

-食材選びで大切にされていることをお教えください。

その時々の旬の良いものを扱うことです。

食材の旬には「はしり」と「さかり」と「名残」というものがあります。

「はしり」は一番水分の高いものが食材として出てくる。それから生産量が上がってくる「さかり」。「名残」が旬の最後になります。

おいしいし生産量も増えて価格も安くなってくる旬のさかりと先のはしりの部分を意識して使っています。良い食材であり、さらに我々にとっても安く仕入れられるので、旬は大事です。

肉とかになると季節に合わせて…気温に合わせた感じですかね。冬だったらちょっと角煮が食べたいなあとか、暖かくなったから砂肝が食べたいなあとか。

それから、加工品とかじゃなくて生鮮食品で勝負していく方がお客様に喜ばれますね。確実にそれは言えます。

家族でやっているお店ですので、自分だけじゃなく母も含めて色々な食材を見て回っています。「今、コレが良いよね」というものを仕入れていますよ。

店主様とご家族の目利きで旬を味わう。その時のさまざまな食材をセットで楽しめる。

 

-おいしい串揚げを作る上で大切にされていることをお教えください。

しっかり仕込んで、しっかり管理して、おいしい状態でおいしく揚げる…(笑)当たり前のことですね(笑)

串揚げは、一気に調理して盛り付けたら完成するプレートメニューとは違います。一本一本が細かいメニューになっていて、これを一個一個適切に管理することが重要です。

それぞれ違う食材の状態をしっかり把握して、一本一本でもおいしく出せるよ!という環境下で管理してあげないといけない。

揚げる前に良い管理状態を逃してしまうと、勝負がそこで終わっちゃいます。良い状態の食材を、しっかり揚げたら、すぐ出す!…というのは、すごい大事です。

秒で違ってくるっていうのもあります。

”秒単位”で状態が変わるほど繊細な串揚げを的確に仕上げる。

 

-調理の技術は、先代から教えて頂いたのですか?

本部の師匠に習いました。一年間ぐらいはみっちり教えられて、あとは日々勉強しながらという感じです。最初の三か月ぐらいは銀座で修業して、立ち上げで師匠に来てもらって1年ぐらいかな。

 

-使われている揚げ油や衣にはどのようなこだわりがありますか。

卵と牛乳をベースにした少し柔らかめのバッター液…バッター液というのは衣の前に付ける液体のことです。それに生パン粉を付けて仕上げます。

揚げ油に関しては磯むらのオリジナルブレンドです。特徴として香ばしさがあるので、温度と油の状態に、衣の香ばしさを任せています。

食材に関してのこだわりになると、扱っているものがいっぱいあるので、色んなパターンがあるかと思うんですけど、結局は食材同士の相性なんですね。

 

-食材によって使うパン粉を変えられているのでしょうか。

パン粉は二種類の細かさを用意して使って、少し荒いパン粉で食材のボリュームを増したり、夜は逆に細かいものを使ってすっきり軽く食べられるように仕上げています。

 

-おいしいお米の炊き方のポイントをお教えください。

うちがこだわっているのがガス釜です。自分の印象としてはあきたこまち協会さんのお米はガス窯で炊き上げた香ばしさとの相性が良いなあと思っています。

これは長年やっているスタッフの言葉ですが、お米は時々で水分量が違うので、その都度水の量を調整をしています。「今だと水を増やすといいよ」とか、そういうのを把握して、浸漬の時間と水の量というのは常にみんなでチェックしています。

お昼ご飯にあわせたタイミングで出すんですが、炊きたてを今日のうちに出していきたいんです。もし余っちゃったら?自分たち食べる(笑)

無洗米の特徴は扱いやすさなんですけど、炊いたらすぐに提供して食べきること。浸水をしっかりして、炊き上がったら早めによくほぐすことです。

店主様が香ばしさがおいしさになると語るこだわりのガス釜。炊き立てのごはんをすぐに召し上がって頂くこだわりは串揚げにも共通している。

 

ついついおかわりを頂いた、一粒一粒おいしく炊きあがったごはん。

 

-調理には煮る・焼く・蒸す…と色々な方法がありますが、中でも揚げるのが一番難しいのではと感じています。家庭でもおいしく揚げるコツをお教えください。

たまに家で「ちょっと人を呼んだから串揚げやってよ」って揚げ物をやらされることがあるんですが(笑)家で揚げ物をやると、効率はめちゃくちゃ悪いです。

業務用のフライヤーではないので、家庭用の鍋の大きさだと油が大した量じゃない。その中でおいしく揚げるためには少ない量しか揚げられないんですよね。

おいしく揚げるためには油の温度を一定にすること。つまり一度にいっぱい揚げないことです。いっぺんに食材を入れれば入れるほど油のパワーがなくなってくるから、ぐったりしちゃう。

油の温度を下げずに保つことによって、出来上がりがカリッとサクッと揚がります。とんかつみたいに156160℃ぐらいから徐々にじわじわっと揚げるものではなく、中~高温でスパッと揚げるものなんです。油の温度が保てないと衣はゆるくなるし、中への火の通りも弱くなる。実は串揚げだけでなく唐揚げ等も一緒なんですよ。

ただ、そうすると少しずつしか揚げられないので効率がすごく悪いから、お店に来て食べてくださいという話になります!(一同大笑)

 

-揚げるときに油から食材を上げるタイミングは、食材によって違うとは思いますが、何か適切なタイミングの目安はありますか。

油に入れたばかりの時にはジュワーっと来るじゃないですか。それがだんだん落ち着いてきて、あとは食材の振動とか…(しばし考え込む)

あれ?…何を見ているんだろう?(一同大笑)

-そこは店主様の長年の感覚、経験でなさっている部分なんですね(笑)

とにかく水分を保ったほうがおいしい食材と、水分を飛ばしたほうがいい食材があるので、その違いを把握すると良いです。水分を保つことでしっとりおいしい、逆に水分を飛ばすことで甘みが出てくる、とかそういうことです!

 

-例えばですが、「魚は加熱しすぎない」等といったことでしょうか。

魚介等は食材の水分量が保たれている方がおいしいことが多いので、加熱処理としては早めが多いでしょうか。ただし白身魚はしっかり火を通して揚げないとふわっとした食感にならないんですよ。アスパラだったら早めにさっと揚げた方が水分が保たれます。

…なんだかこうして訊かれると自分でも「あれ、どうしてるのかな?」ってなりますね(大笑)

 

=インタビュアー実食!=

あい串(串揚げ12品)を頂きました。

ランチセットの「あい串」。これにはごはんがつき、おかわり自由。

 

■串揚げ12種メニュー■

・天使の海老(クルマエビ)

・長ネギと豚フィレ肉

・白ギス

・こんにゃく

・舞茸

・うずらの卵

・高野豆腐

・グリーンアスパラ

・ブロッコリー

・新玉ねぎ

・チキン南蛮

・新じゃが串

 

オーダーが入ってから、店主様が一本一本丁寧に仕上げ、揚げたてを味わえる贅沢なひと時を味わえます。食材の風味を最大に引き出して外はサクサク、中はしっとり食感に仕上がっておりました。

個人的な順位をつけると1位天使の海老、2位白ギス、3位グリーンアスパラ。

(個人的)1位の「天使の海老」は車海老の串揚げ。殻付きで香ばしく、海老みその旨味もたっぷり。

 

(個人的)2位の「白ギス」はふんわり食感と衣の食感が絶妙。タルタルソースとの組み合わせが最高。

 

(個人的)3位の「グリーンアスパラ」は豚肉を巻いた特大サイズのアスパラがインパクト大。甘みもしっかり。

お好みの味で食べられるようにオリジナルソース、オリジナルポン酢、レモン、辛子、ブレンド塩(フランス産塩、山椒をブレンド)等の豊富な調味料が用意されており、自分に合った味付けで串揚げを楽しめるようになっております。迷ったら店主様おすすめの食べ方(味付け)で頂きましょう。

ごちそうさまでした!

ぎんざ磯むら 横浜関内店

神奈川県横浜市中区常盤町6-76 東邦ビル1F

TEL:045-662-5178

営業時間:【ランチ】
11:30~14:00(L.O.13:30)
【ディナー】
17:00~22:00(L.O.21:30)

定休日:年中無休

https://www.ginza-isomura.co.jp/kannai.html