インタビューを通じ、大潟村あきたこまち生産者協会のお米やパスタを選んだ理由、おすすめの調理法などを紹介します。
ホーム > プロの料理人が選ぶ理由 > 天丼に天ぷらの盛り合わせが付いたランチが人気の「天ぷら割烹 天正」様
2024.5.15
東京の西日暮里駅から徒歩4分にある「天正(てんまさ)」様は、かき揚げ天丼に天ぷらの盛り合わせがついたランチ「のっけ定食」が人気の天ぷら割烹です。
新鮮な旬の食材にこだわり、春のこの時期はカツオやホタルイカをお刺身や一品料理で、たらの芽や木の芽といった山菜は天ぷらで楽しめます。豊洲での仕入れや揚げ油について等、天ぷらを美味しくする秘訣を店主の山田様にじっくりお伺いしました。
-お店をオープンされた背景や、当時のエピソード等があればお教えください
このお店を始める前はスーパーに勤めたり、築地と銀座、八丁堀に3店舗あった天辰(てんたつ)というお店で修行していました。天ぷらや簡単な料理、季節の料理を出すお店です。銀座のお店に25、6年いましたが、2011年の東日本大震災の後にお店を閉めることになって、自分もある程度いい年齢になっていたこともあり、自分でお店をやろうと思ったのがきっかけです。
体調を崩したことと、物件を探すのに時間がかかってしまい、開店できたのが2016年でした。このお店を初めてまる8年になりますが、コロナで3年ぐらいは休業していたので、実質、営業していた期間は5年になります。
-お店探しに時間をかけられたんですね
あまり開店資金がなかったので、それなりの広さがある居抜き物件、ある程度立地が良いところを探しました。銀座のお店にはたくさんのお客様に来て頂いていたので、本当は都心で探したかったのですが、なかなか自分のイメージと合う物件が見つからなくて。
半年か1年ぐらいならお客様も戻って来てくれるとは思いましたが、2年以上かかってしまったので諦めたところもあります。最終的に、場所やお店の広さ、家賃など色々加味して、この場所にある今のお店に決めました。出身は荒川区、南千住の方なので地元でもあります。
-料理人になったきっかけをお教えください
もともと若い頃は魚屋をやりたくて職を探して、アメ横とかスーパーの魚屋でアルバイトをやっていました。結局、魚屋になることはできませんでしたが、雇ってもらえないかと飛び込んだものの断られたお店から、先ほど話した銀座のお店の社長にたまたま私の話がいったのがきっかけです。料理人になろうと始めたわけではなく、とりあえず魚を扱えるし遊んでいるのもなということでお店に入りました。
-魚屋になりたかったということは、釣りがお好きだったとか?
そうですね。釣りは好きですが、船酔いするので船には乗れません。お店の休みが日曜祭日だとして、前日の夜11時過ぎまで仕事となると、結局、寝ないで釣りに行くことになるので、最近はもう疲れちゃってだめですね。基本的にヘラブナだから、専用の釣り堀とか、これから暖かくなるのでダムとか川に行きます。
-コース料理にお刺身等の魚料理があるのは、魚屋になりたかったというのもありますか?
それもありますが、基本は前のお店の営業スタイルのままやっています。そのお店でも、あきたこまち協会さんのあきたこまちを使っていました。当時使っていた米屋のお米があまり美味しくないし、値段も高いしというところに飛び込みで営業が来たんです。値段と品質をみて、これだったらということで当時使っていたお米から、あきたこまちに変わりました。
自分のお店を始めるまでに、色々お米を検討しましたが値段が合わず、あきたこまち協会さんに電話で相談しました。前のお店から考えると、あきたこまち歴は30年近くになりますね。
-ご飯は天丼用に硬めに炊いたりしていますか?
ご飯の硬さは自分の好みですね。天丼のタレをかけるので硬めに炊くというのもありますが、あまり軟らかいのが好きじゃないので、ちょっと硬めに炊いています。
無洗米を10分ぐらい水に浸してから炊いています。なるべく普通の水ではなく、ウォーターサーバーや浄水器の水を使って炊いています。
-お店を続ける上で大事にしていることをお教えください
お客様に喜んで帰って頂くのが1番かなと思います。味はもちろん、接客についても気を付けています。うちのお店に来て食事をして頂いたお客様には、美味しかったねと言って頂けるように、常に考えています。
食材は季節のものを使うようにしています。今の季節だとカツオとかホタルイカですね。今は1年中、旬に関係なく何でも食べられますが、春先は煮物なら筍を使ったり、天ぷらはたらの芽とか木の芽といった山菜を使うようにしています。その季節にしか食べられないものを使う、そこに一番こだわっています。
何度か予約で来て頂けるのであれば、2回目は多少アレンジを加えたものに変えたりはしますが、基本的にはその時期のものをなるべく使っています。一度来て終わりということではなく、一度来てみてあれが良かった、美味しかったからまた行こうかと思って頂けるようにやっています。
-食材は豊洲で仕入れられているそうですが、以前は築地市場から?
そうですね。丁度お店の開店と豊洲への移転が重なる時期だったので、ここからだと千住市場も近いのでどうしようかと考えましたが、前のお店で取引のあった仕入れ先に声をかけたら、うちでやってよって言ってくれたので、今の仕入れ先は全部、前から付き合いのあるお店です。もう20~30年になるので、お互いの信用がある分、良いものを出してくれますね。
-築地市場と豊洲市場の違いを感じることはありますか?
豊洲は買い回りしにくいですね。築地だと、どこに何があるかが分かりやすかったし、欲しい品物も見つけやすかった。場外にも買い物に行けましたしね。豊洲まで行って駐車場待ちして、あちこち移動しながら仕入れてお店に戻ってくると、築地に通っていた時より1時間近く余計にかかってしまいます。
それと豊洲に移って、昔から知っているお店が結構減ってきていますね。豊洲は3階にちょっとした飲食店(エリア毎に3つに分かれている)がありますが、ラーメン屋は1軒しかないし、他はカレーとかうなぎ、寿司とかばかりなので、朝からは食べられないですよね。築地は場内、場外に色々な飲食店があったし、晴海の海沿いにも何軒かあるので選ぶこともできました。
-仕込みや下準備で気を付けてことをお教えください
魚の鮮度には気を付けて、とにかく早く、綺麗におろせるようにしています。せっかく良いものを仕入れても、出しっぱなしにしたり必要以上に手で触ってしまうと鮮度が落ちてしまいます。
朝5時に市場に行って、仕入れた魚が配達で届く8時半ぐらいから、ランチに間に合うよう仕込みを始めます。忙しければ毎日行きますが、普段は1週間に3回ぐらいかな。欲しいものが決まっていれば、電話で注文してしまうこともあります。朝早くに行くと品物が揃っていないこともあるので、その場合に配達してもらいます。昼が終わったら夜の仕込みに入りますが、夜の営業に備えて4時から5時まで、1時間は必ず休憩で昼寝をするようにしています。
-調味料に対して、こだわりがあればお教えください
天ぷらに付けてもらう塩は、ヒマラヤの岩塩です。岩塩はただしょっぱいだけじゃなくうま味もありますから。あとは、やっぱり味が違ってきますので料理酒とかみりんはこだわって選ぶようにしています。
出汁は、昆布を一晩水につけて昆布の旨味を出してから、翌日の朝に鰹節を入れて出汁を引いています。最近は、調味料も品質が良くなりましたね。自分の若い頃は白だしとかありませんでしたが、今は結構美味しいのもあるし、種類がどんどん増えているので試してみたり。調味料というか、美味しいものにこだわっています。新しいものを試したり、試行錯誤してみないと、いつになっても同じ味になってしまいます。
天つゆとか天丼のタレは味を変えずに作る必要がありますが、それ以外のものはその時々で味も違うし変わってくるので、同じようにやっていたら同じものしかできない。新しいものが悪いとか簡単なものが悪いとかは思わないし、それを自分でアレンジすればいいという感覚でいます。
天つゆは、その日の朝に引いた出汁に醤油とみりん、砂糖を足して作っています。天丼のタレは、残った天つゆを継ぎ足しながら、そこに醤油とか酒、砂糖を入れたものを火入れして毎朝作り直しています。
-天ぷらを作る際に、美味しく揚げるために気を付けていることをお教えください
やっぱり油は一番気を付けています。うち独自の油を専門に頼んで送ってもらっています。サラダ油とごま油のブレンドですが、ごま油と言っても香り高いものや色が濃いもの、何種類もある中からうちのお店で使っている食材とかに合うものを作ってもらいました。
揚げ油は、新しい油にちょっと使った二番油とかを足して調整しています。まっさらの油の方が綺麗に揚がりますが、二番油を入れると、もうちょっとカリっと揚がるというか違いが出ます。
衣の溶き方も夏や冬、季節によって全然違ってきます。天ぷらの衣は暑さに弱いので、暑くなればなるほど垂れる。専門用語じゃ伸びるって言いますが、伸びるのが早いので、なるべく溶かないようにしています。油の調整や衣の状態、火加減に関しては感覚でやっているので、うまく説明できませんね。
正直に言えば、今日はちょっとだるいなと思ってしまうと、天ぷらが上手く揚がらなかったするので、「いけねえ、これじゃダメだから調整しなきゃ」とか失敗もしますね。
-揚げ油の温度も変わったりしますか?
季節によっても変わりますし、揚げる量でも違いますね。基本的には160~180度ぐらいの間で揚げるようにしていますが、ランチとか忙しいとちょっと温度が下がってしまったりするので、火力を調整しています。
例えばコース料理で3人前を一気に揚げなきゃいけない場合は、180度ぐらいの温度で一度に食材をいくつも揚げますが、1人前だったら鍋の中に1つ、2つしか入れないので150度ぐらいの温度でも揚げられます。ただ、温度が上下してしまうのは油にもあまり良くないので、 できれば一定の温度であるのが理想です。
最近はフライヤーを使う天ぷら屋も増えたと聞いています。普通のフライヤーじゃなくて天ぷら専用フライヤーがあるそうで、正直言えばそっちの方が楽ですよね。うちはガスだから火力調整が必要ですが、フライヤーは電源を入れるだけで一定の温度を保てるわけですから。
-ランチメニューの「のっけ定食」とは、どのようなものでしょうか
かき揚げが1つと野菜天が3つ、それに魚とエビの天ぷらがついた定食です。かき揚げは、そのままお塩かおろし天つゆで食べるか、天丼にするかを選べます。
-「のっけ定食」の「のっけ」は、かき揚げを乗っけるかどうかということなんですね。ご主人が考えられたのですか?
これも前のお店からのものです。それも、もともとは築地にあったカレー屋、豊ちゃん(閉店)というお店で聞いた「のっけ」を、先輩が「良いじゃん」ということでいただいたらしいです。カレーの上にカツを乗っけるからそう言っていたのかな。
-家庭でもできる美味しく天ぷらを揚げるコツ等があればお教えください
火力がポイントになるので、家庭のガス台で天ぷらを揚げる際は、天ぷら鍋に入れる食材を1つか2つにしてください。
お店みたいに火力が強ければ鍋の中にある程度入れても油の温度を保てますが、家庭の火力で一度にたくさん入れてしまうと、揚げるというよりは油で煮る形になってしまうので、カリッと揚がりません。
1番簡単な方法は、油が150~160度になったら食材を2つぐらい入れて、また温度が上がるまで、そのまま待ちます。手間はかかりますが、そうすれば家庭でも美味しい天ぷらが揚げられると思います。
=インタビュアー実食!=
今回はおすすめとして、ランチメニューにある「のっけ定食」をいただきました。
メインのかき揚げは、ご飯にのっける天丼でお願いしました。少し硬めのあきたこまちのご飯と、タレが絡んだかき揚げがマッチしていてとても美味しくいただきました。
天ぷらの盛り合わせは、カリっと揚がったかぼちゃ・ナス・ピーマン・エビ・キスの5種類。エビはぷりぷりの歯ごたえで新鮮さが感じられ、岩塩と大根おろしたっぷりの天つゆ、お好みで2種類の味が楽しめます。しじみがたくさん入ったお味噌汁、キュウリのぬか漬けと、ほんのり柚子が香るキャベツの浅漬けでさっぱりと口直しできます。
かき揚げ天丼と天ぷら盛り合わせが楽しめる定食は、とても食べ応えがありお腹いっぱいになれて1,200円とお得ですので、是非皆様に食べて頂きたいです。
カウンター席があるので1人でふらっと入れますし、個室もあるので歓迎会などのおもてなしにもおすすめのお店です。八海山、越乃寒梅、〆張鶴、阿部勘といった人気の日本酒の他に、焼酎や果実酒などお酒の種類も豊富ですので、昼はランチを楽しんで、夜はじっくりお酒を楽しむといった色々なシーンで行きたくなるお店です。
またすぐにでも食べたくなるランチでした。とても美味しかったです。ご馳走様でした。
猪爪
東京都荒川区西日暮里5-10-13
TEL:03-3801-8711
営業時間:昼の部 11:00~14:00
夜の部 17:00~21:30
(ドリンクL.O.20:00)
定休日:日曜日、祝日
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